駅でカラスを見かけた日の話

カラスが線路のレールの上を器用に歩く。体操選手のようにバランスをとりながら20歩ほど歩いて、一旦石の上に飛び降りてから、またレールの上へ飛び乗って歩き始める。

 

間もなく電車が到着するというアナウンスをカラスが聞くわけもなく、まだレール歩きを続けている。「線路は感電の恐れがあるため、絶対に降りないでください」という看板がむなしくも視界に入る。

 

電車を待つ客の一人がホームの端に近寄って、カラスの写真を撮り始める。カラスは首をかしげる。そして飛び立つ。電車が進入する。客は慌ててホームから離れる。

 

鳥が自由なら僕らは不自由?

 

客は降りる、そして客は乗る。電車はゆっくりと去る。カラスは線路に舞い戻る。僕らは行く。彼らは来る。自由と不自由の狭間で電車を1本見送る。