一流の執着心

昨日、執着心について書いたので、もう少し執着して考えてみる。

 

自分はあるメーカーに勤めているので、デザイナーや建築家と働くことが度々ある。以前、ある人がとある部品をとても小さくすることにこだわった。正直技術的にも困難だし、物理的にも使用に耐えうるかあやしかったし、そんなに小さくしなくても・・・と周囲は散々忠告したけど、その人は断固小さくする方向を変えなかった。

 

正直本当にやるのかよー、と思ったプロジェクトだったけど、なんやかんや試行錯誤を経て合格をもらえた部品になった(本当はもっと小さいのが良かったらしいけど、それはもう構造的に無理ということで勘弁してもらった)。結果として、それが世界的に評価され、その人はまた一段と有名になった。

 

その人のそのアイデアも、最初は好奇心から始まったことは間違いないと思うけど、これと決めたら妥協しない執着力が半端ない。スタッフ涙目でも平気でNOと言う。でもその人気にしない。天才に心酔してこき使われても文句言わないスタッフは涙目でも頑張るし、こちらもしょうがないからやりますかとなるし、無茶苦茶ばっかり言われるけど結局出来上がってプロジェクト完遂。あちらはちゃっかりほぼ要求通りのものを手に入れて帰る。執着心を軸にみんなを動かす推進力ってすごい。

 

金ない、納期ない、アイデアない、のクリエイティブ案件は正直メーカー泣かせだ。それでも今回の案件がほかとちょっと違ったのは、その人の世界を驚かせるテーマを見つける感性が天才的に優れていたことだ。部品を集めて作られた完成形は、周囲の作品と比べても群を抜いて斬新だった。どうでもいいことに執着しているように見えたけど、そこが世界の評価の分岐点になることを見抜いていたと思う。自己満足で終わるデザイナーや建築家の案件は多々あるけど、これは天才と働けた貴重な機会だった。

 

執着心も一歩間違えると、周囲から相手にされなくなって危険なだけに、コントロールしながら執着をやめないって高い能力が必要だな。それが昨日終わりに出てきた「一流の執着心」ってやつかもしれない。